「……ッキィー!!何が“鳳皇は終わりだ”、よ!終わりなのはアンタの方だっつーの!!アンタなんか十夜達にコテンパンに殺られちゃえ!バカヤロー!」


開いていた扉を勢いよく閉め、これでもかっていうぐらい思いっきり足で蹴りまくってやる。



ムカツクムカツクムカツクムカツクー!!


何なんだあの男は!!

ペラペラペラペラと男のくせに喋りやがって、煌よりウザいんだけど!!


あれだったらまだ煌の方が可愛げがあるし!


大体ねぇ──


──ガチャ。



ん?

今、ガチャって音しなかった?


蹴っていた足を下ろし、背中を向けてドアノブに手をかける。



ガチャガチャガチャガチャ。


「ん?」


ガチャガチャガチャガチャ。



何回右に回しても、逆に左に回してみても、さっきまで開いていたドアはビクともしない。


そこで漸く気が付いた。

ドアの鍵が閉められてしまったことを。



や、やっちゃったぁー!


あたし、自分でドア閉めちゃったよ!!


嘘でしょ!?

せっかく逃げ出すチャンスだったのに!


もう、あたしの馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ー!!


思いもよらない大失態に、天井を仰いでその場に崩れ落ちる。



って、落ち込んでる場合じゃない。


中田の作戦をどうにか阻止しなきゃ!



スクッと立ち上がって、頼みの綱であるカッターが入った机へと走っていく。


と、その時、机の角に太ももがぶつかってその場に立ち止まった。



あれ?ポケットの中に何か入ってる?


布越しに何か当たった気がして、縛られた両手をそっとポケットに持っていった。


この形は、スマホ?


あ、そうだ!スマホ、ポケットに入れてたんだ!


良かった。サイレントにしたままだったから見つからなかったんだ。