「おい、シュウ。今日も待ち伏せされてんぞ」

「……ったりぃ」


親友の三橋憲司(みはし けんじ:通称ケン)と一緒に下校しようと校門まで来たはいいが、明らかに制服の違う女子高生が立っている。

ケンが“シュウ”と呼ぶ俺、久峨 周(くが あまね)。

“あまね”なんて名前、女みたいで気に入らないから、仲のいい奴らには“シュウ”で通っている。

ってか、俺の本当の名前を知ってる奴………いるのか?


ケンと他愛ない話をしながら、見知らぬ女の横を通り過ぎると。


「あっ、あのっ!久峨くんッ!!」

「……………あ?」


名前を呼ばれて、仕方なく女の方に視線を向ければ。


「わ、私……桜花女子校の松永莉那って言いますっ!」

「………」

「あのっ!………いつも同じ電車に乗ってるんですけどっ」

「へぇ…………それで?」

「えっと………あのっ、一目惚れなんですっ!私と付き合って下さいッ!!」