「ミツキ」 ふわり、と彼の薄い唇から紡がれたそれに、わたしは耳を疑った。 「……え、」 骨ばった綺麗な手が、茫然と立ち尽くすわたしをその腕のなかへと引き込む。 「ごめんね、意地悪しすぎた。 ……泣かせるつもりはなかった」 「な、に」 だって、それは。 「すきだよ、ミツキ」 今まで一度だって呼んでくれなかった、 ーーわたしの名前。