エリンもドネリティ社も事業好調にすすんでいるある日のこと。


ドネリティ社の会議に出席していたエリンが自分のデザイン事務所に戻ろうと本社ビルの入り口に差し掛かったところで、ひとりの青年に声をかけられた。


「君、ここのビルの人?」


「はい。」


「じゃあ、1つ教えてほしいんだけど、ここの前の社長でエリンティア・クォンテ・ドネリティって人の好きなもの教えてくれない?

やっぱり女性だから花かなぁ。それとも好きなお菓子とかある?」


「えっ・・・あのお客様はどういったお方なのですか?」


エリンは女性事務員のような口調で尋ねてみた。


「身分は明かせないんだけどね、プレゼントを用意しなければならないんだよ。
近いうちに会うと思うんで、すぐに誰かはわかるけど、まずは下見っていうかね。」



「そ、そうなんですか。
そうですねぇ・・・お菓子は会社ではあまり食べないので、お花の方がいいでしょうね。
とくにお花の苦手はありません。

自分でデザインなさるくらいなので、生花はとっても好きですね。」


「へぇ、君もしかして、秘書課の人?
彼女の情報ツウだね。」


「ま、まぁ・・・では失礼します。」



「ちょっと待って、お礼に駅まで送るよ。
車に乗ってって。」


「いえ、私はこれから彼とデートなので・・・。」


「あ・・・そうだったんだ。ごめんね。
情報ありがとう。
楽しんできて。」



ちょっとさびしげな表情をした青年に申し訳ない気もしたが、エリンは事務所へと足早に戻っていった。




「ただいまぁ!」


「お疲れ、エリン。
自らの売り込みご苦労さんでした。」


「兄さん、会社では社長って言わないと!」


「いいのよ、ドネリティではまずいけど、こっちは社員は少数でアットホームなのがいいの。
それに、こっちの社員はレッドとラングのことはよく知ってるでしょ。」


「そうですけど・・・アットホームなのがドネリティに行ってるときに出ちゃったら大変ですよ。
あっちの社員は、僕たち家族と社長が同じ家にいることを知りませんから。」


「めんどくさいわね。」


「あっ、エリンさぁ・・・あのな・・・整理がついたら夕飯いっしょに行かないか?」


「ラングも?」


「エリンごめん、僕はドネリティの秘書課の女の子たちの女子会に呼ばれてるから・・・ちょっと。」


「女子会なんてあるの?
で、どうしてレッドは呼ばれてないの?」


「兄さんは秘書課の女の子たちからリクエストうけてないから。
僕と、営業のオスカーとレオと総務から2人がご指名でね。」


「あら・・・かわいそうね。レッド・・・。」



「俺はいいんだよ、妹みたいに我がままばかりいうヤツは面倒だから。」