「ねぇ、ねぇ亀さんたち……」
隣の丘ヤドカリ水槽から、声が落ちてきて、私達は視線を上げた。
そこには、いつもの一郎君。
「どうしたの、一郎君。何だか元気がなさそうだけど?」
でかでかちゃんが声を掛けると、一郎君は、ゆっくりと飛び出したまあるいお目目をくるくる回した。
そうなの、この頃一郎君が、何となく元気が無いのよね……。
前みたいに、目の回転に今一つキレが無い。
「うん、あのね……」
言葉を待っていると、ZZZZと、一郎君のいびきが聞こえた。
「あれ? 眠っちゃったのかな?」
でかでかちゃんが首を傾げる。
「うん……。そうみたいね」
なんだか、胸の中がザワザワした。
とても、嫌な感じ。
私は心の中のいわれのない不安をかき消すように、じっと、眠っている一郎くんを見詰めていた。