「まずは水槽とグッツを洗おうね! お姉ちゃん、みーちゃん手伝ってね」

12畳の居間のフローリングの茶色い床の上に、買い出しして来た私達の新居&冬支度グッツを広げたお母さんは、60センチの水槽を抱えて子供達に声を掛けた。

そしてそのまま、学校から帰ってきた里美お姉ちゃんと、みーちゃんを引き連れて、居間に面した対面式キッチンの隣のバスルームに向かった。

斉藤さんちの居間は洋間で、私達はその南壁面に付いた出窓の前のスチールラックの上のプラケース住まい。

相変わらず、隣にはカラフル賑やかな丘ヤドカリ一座が、ニギニギ賑わっている。

「ねえ、亀さん達、新しいお家が来たんだねぇ」

丘ヤドカリ一座で一番大きい、目の覚めるような青とオレンジのストライプ模様の貝殻の人。一郎君が、興味津々で私に聞いて来た。

相変わらず飛び出したお目目が、きょろきょろひょうきんに忙しなく動いている。

一郎くん、もうそろそろ私達の名前覚えてよ。

そう言う気持ちは顔に出さず、私はニコニコ愛想良く答える。

ご近所さんは、大事だからね。

「うん。そうみたいね。水中ヒーターも入れてくれるみたいだから、ありがたいわ♪」

「へぇ~……」

また、何か話しを振って来るのかと身構えたら、一郎君はそのまま『こっくりこっくり』船をこぎ出し始めてしまった。

あはは……。お休み。