「じゃあシゲちゃんとここにいる? シゲちゃんと蜜花ちゃんで呼びにいってもらってもいいけど、椿、初の部屋でしょう?」


「だからなに?」


「シゲちゃんに初の部屋、見られてもいいの?」


露骨に嫌そうな顔になる初ちゃん。

初ちゃんとシゲさんはよほどウマが合わないのか、お互い話題に上がるとギスギスした空気になる。


椿さんが初ちゃんの部屋に?

そういえば、初めて会った時……

椿さんが小指を軽く噛んだ時に見せた笑みを思い出し、頬に熱が走った。


「……なに? 気持ち悪いんだけど」


いつの間にか初ちゃんのことと凝視していたことに気づき、慌てて目をそらした。

初ちゃんはちらっとわたしをに視線を向けた後、表情を変えることもなく顔を背ける。


「こっち。背後から襲わないでよ」





この時、誰も言葉にはしなかったが、皆の頭の中に、亘一さんが犯人じゃないかという意識があったんだと思う。

そう思い込むことで、恐怖を忘れようとしていた。

第三者の存在がいるかもしれないという可能性も、この中にいる他の人物が犯人かもしれないということも、それぞれの頭の中にあったはずなのに。




結局、快さんと多恵さんが鍵を取りにいく間、神原さんとシゲさんはこのまま廊下に残り、わたしと初ちゃんは晴さんを呼びに行くことに決まった。


窓の外を見ると、雨は止んだのに空は今だ雲に覆われている。


これ以上天候が悪化しないことを祈りつつ、わたしと初ちゃんは椿さんを誘いに初ちゃんの部屋へと向かった。