情熱効果あり

東京の海はお世辞でもきれいとはいえない。それでも、あちこちのベンチや芝生に座って、海を眺めている人が多い。

私たちも空いていたベンチに座る。


「そういえばさ」


「ん?なに?」


「まだ返事もらってないよね?今、聞かせて」


「返事?何かあった?何だっけ?」


何の返事だった?何か聞かれていたっけ?


「本気で忘れている?」


「う…ごめんなさい。本気で忘れているかも…」


はあ…


哲志先輩の溜め息が怖い。

何を忘れてた?思い出せ!思い出すんだ!

頭を叩くが何も出てこない…。情けない。大事なことだと思うのに。


「ちょっと。麻衣、何してる?」


グーになっていた私の手を開いて、指を絡める。


「いいよ。もう一回言ってあげる。すぐに答えてね」


きっと大事なことだと思う。それを思い出せない失礼な私に優しくしてくれるから、すがるように頷いた。