わたしの名前はーーだったんだ。



キッチンから買っておいたお菓子を皿に盛り付け紅茶と一緒にリビングへ戻ると、大人しく少女がソファに座っていた。

ソファに着物の少女とは、少しミスマッチで違和感がある。

「どうぞ」

「……どうも」

僕に気づいていなかったのか目を開き驚いている。

向かいのソファに腰掛けると、少女からの視線が突き刺さってきた。

視線が痛い……。

あえて無言で返すと、少女は視線を下げ膝に置いた自分の拳を見ているようだ。


今時の日本女子は洋服を好んで着歩いている。家では和装を着てくつろいでいるようだが、オシャレとして外では洋装がいいのだそうだ。

………僕が思うに、外でも着物の着て出歩いている年頃の女子は、オシャレに興味がない。それか着る必要がないかの二択だ。この少女は見るからに上質な布で作られた朱色の着物を身につけている。それに少女が忘れて店に置いていた扇子も金の糸で細部まで刺繍がされており、センスもいい。

まず、買う金がなくオシャレに興味がないというわけではないのだろう。

とにかく、何か聞き出さないといけない。

「君は…いや、まず紅茶を飲んだほうがいい。温まるよ」