「ね、葵〜。わたし甘味が食べたい。そこの店でちょっと食べない?」


見つけたのは団子屋。夕方とあり、やはり少し混んでいる。


「お嬢様、此処はあなたが来ていいところではございませんよ。お屋敷に帰って商人から買い付けましょう」

「嫌〜……」

「………」

「あ!見て!あそこにもお店があるよ!」

「………」

「西洋のお店ね。着物だけど入っていいかな。どんなものがあるのか気になる…」

「……あの」

「なんだか人も少ないし、今いけば大丈夫よね!」

「…行きましょうか」

「やった!葵大好き!」


そんなにねだられたら断ろうにも断れないじゃないですか…。

言葉を押し込め、もう行ってしまわれたお嬢様のあとを走って追いかけた。





ーーーチリン



西洋の造りのドアを押すと、ベルの音が鳴りキャーと感動する。

日本の文化は大好きだけど、西洋の新しい文化にも興味はある。

一度お父上に知識として聞かされた時に西洋の物はわかっているつもりだ。

「葵、西洋は畳ではなくこの『椅子』というのに座るそうよ。団子屋のと違って細くて倒れそうね…」