ふんわりとした香りで微かに目が覚めた。ゆっくりと目を開け、ボーッとしたまま起き上がる。


「あ……そっか」


見慣れない景色に目が大きく開かれる。

少しだけ、夢ならいいのにと思っていたことに苦笑した。


……いい加減、現実に向き合わないと。


昨日の少年には部屋を出ては絶対にいけないと言われていたし、壁に寄りかかり静かに目を閉じた。



「ーーーーーー……
ーーーーーーー………」


自分に聞こえるか聞こえないかぐらいの音の小ささで歌う。


この歌は歌うだけで精神が安定し、気持ちの整理をしたい時によく歌うのだ。
もちろん、それ以外でも好んで歌うのだが。