わたしの名前はーーだったんだ。



「…ここ」


長い塀に囲まれた門を前に立ち止まる。
腕を離して門をゆっくりと開け始めた。

「今日は泊まって行けばいいよ。ゆっくりついてきて。俺は寝てるってことになってるからな」


わたしはコクコクと頷き少年の袖を掴んだ。バレるのが怖くてついやってしまったことだが、少年も何も言わないということは了承してくれたのだろうか。

廊下を迷わず進んでいき、屋敷の奥にある部屋の中に入って行った。

最後に襖を静かにしめると、少年はすぐに火をつける。
ほんのりと灯りがともり、少年の顔がうっすら見えてきた。

「あの、ありがとう」


「うん?……いいよ、これぐらい。何か事情あるんだろ?大丈夫だから…さ」


畳んであった布団にぐったりと仰向けに倒れこむ。右腕で目を隠し、しばらく静かに深呼吸すると少年は起き上がり目をこすった。



「眠い…ごめん。事情は明日聞くから、ここで寝てていいよ。俺は隣の部屋で寝とく。部屋から絶対にでないこと。これを守っとけば大丈夫だからな」


少年は有無を言わせず部屋を出て行った。


……とりあえず、助かったぁ。