わたしの名前はーーだったんだ。



しばらく西洋の建物の近くにある木に寄りかかり、ぼーっと足元を見つめること数十分。気温が下がってくるのがキツイ。


手を吐息で暖めようとする。
ーーー白い息。
夜の寒さには慣れていたつもりだったけど、甘くみていたようだ。


公園の中央にある西洋建築の屋根とイスと小さなテーブルだけの簡素な設備だが、野外で寝るにしては充分過ぎるだろう。

電灯の中イスに近寄る。対して汚れがなく、そのまま横になった。

やはり…野外で寝るなんて戸惑いがある。だから全然寝付けない。

やけに目が冴えるし、体を起こして背もたれに預ける。


もう……寝れそうにないなぁ
着物もすっかり汚れちゃった。






「あんた、まだこんなとこいたのか」


ビクッと体が揺れる。恐る恐る声がした方向に顔を向けると……いた。少年がポチを抱えたまま、暗闇の中に佇んでいた。


「あんたさぁ…帰るとこないんじゃん。
最初からそう言っとけばいいのに」


「しょうがないじゃない。言えるわけないのよ、こんなこと」

音も無く現れた少年に多少驚いたが、すぐに気を取り戻した。
もうバレてもいい。諦めた。だって野宿しようとしてること見られたんだから。
公家の者ってなんとなくわかってるみたいだし、これ以上どうしろってのよ。