いくつか会話を交わしていると、少年の後方から提灯を片手に走っている男の姿があった。こちらに目を向けると一直線に走ってくる。
一瞬わたしを追いかけてきたのかと思ったが、違うようだ。黒色の袴を身につけた男は少年に駆け寄った。
「若様!勝手にいなくなられては困ります!ポチ様は私共が探してまいりますから待っていてくださいと言ったではありませんか…」
「知らん。お前らに探させるより自分で探したほうが早い」
プイと子犬ーポチを抱きかかえたまま、少年はチラリと男を見るだけで対して気にしていない。男は額に手を当て呆れたように首を振っている。
「とにかく、もう帰るから黙っとけ。いつもうるさい」
「若様がいなくなるからですよ…。さぁ帰りましょう。皆も心配しております。
……して、この娘は?」
「別にポチを捕まえてくれただけだ。夜中に出歩く娘など珍しいからな。少し質問してた。あんたも早く帰りなよ」
最後の言葉はわたしに向けられたものだ。それから二人は来た道をたどり戻っていった。
…変な人たち。

