わたしの名前はーーだったんだ。



予想だと、逃げ出した犬を追いかけてきたというところだろう。

安心し思わず声を出すと、それに気づいた少年が声をあげた。


「そこの人!ちょっとその犬捕まえて!」

「あ、はい!」

………返事をしてしまったのだ。助けるしかない。断る理由もないし、しょうがないというのが本音か。犬は苦手というほどでもないが得意でもないのだ。
さて、どうするか…

とりあえず、だんだんと見えてきた姿に立ちふさがる。

……可愛い…

小さい体にふわふわの白い毛。雪のように柔らかそうな尻尾。

思わず屈み込み手を伸ばすと、走りから歩きに変えた犬がゆっくりと近寄ってきてくれた。


「…あったかい」


子犬の体温が熱くて表情を見ると、息を切らせていた。よほど走ってきたのだろう。


「ちょっと、あんた!ポチに触るなよ!」


「へ…っ!?」


気づいたときには腕から子犬がいなくなる。つられて顔をあげると、同じく息を切らせた少年の姿があった。


「あ…ごめんなさい」


「そうだよ!最初からそうしとけばいいじゃんか!」

散切り頭にわたしと同じくらいの背丈。整った顔からは幼さが残っている。まだ十代前半だろう。
なんか態度がイマイチ…というか、結構強気ですね…!

ちょっと頬をピクピクさせながら苦笑い。