わたしの名前はーーだったんだ。



場所は変わって大通りから少し離れた川沿いを歩く少女。

時々小石を蹴ったりしているところから、何かあったと伺える。


もう、なんであんな話するのかな…!

イライラに合わせて足が早まる。


「あ〜!だいたいおかしいじゃん!
まずなんで家のこと聞く………」


そしてハッと気づいた。

わたし…変な人に見られてる…?

キョロキョロ見回すと……やっぱり。あのお婆さんやあの男の子。人通りは少ないといえど人はいるものだ。
大声を出すことなんてなかったし、こんな大勢に見られるなんて初めてで顔が熱くなるのを感じた。

「あ、あの、すみません!」

その場にいたたまれなくて橋の下に逃げ込む。川原で柔らかい土だったが、着物を汚すのは気が引けた。川のそばにしゃがみ込み揺れる波に目を向ける。


予想通り顔を赤くしたわたしがいた。


はしたないことはしないようにってお父上にも言われてたのに……

お父上…

なぜ亡くなわれてしまわれたの……



今更ながらに落ち込む。

葵もまだ帰ってきてないし…。もしかしたら今日中は難しいのかもしれない。

家にこもっていながら何も知らないなんて。自分の無知を恥じる。