わたしの名前はーーだったんだ。



この少女は何かある。

尋ねようとすると、すぐに顔を上げ警戒されていることがわかった。

………参ったなぁ

自分から連れて来たにも関わらず少し困る。

「紅茶、美味しい?」

少女はこくりと頷きカップを両手で持ったまま膝の上で止まる。

「よかった。紅茶にはリラックス効果があるんだよ。どうかな、落ち着いた?」

「別に…何もないですから」

「そっか」

「………」

「…君さ、いいとことのお嬢さんだよね。もう暗くなってるけど…帰らなくてもいいの?」

「……家、ないし」

「え……」

あんな豪華な修飾品を身につけてるってのに家がない…って?
遊女?いや、雰囲気から違う。

家がないんじゃなくて、なくなったとか…?


「家…ないの?」


「……やっぱりあるから」


「………」


「……何その目」


「………」


「あ、あるから。ほんとに」


「そっか、じゃあもう帰る?」


「帰る!紅茶美味しかったですありがとう」


一方的で早口に言うと、少女はすぐにドアへ走っていきバンッと派手な音をたてて外へ出て行った。


「………家あったんだ。
大丈夫かな…?」