わたしは公家に産まれた子女。
いくら文明開化をしたと言っても、由緒ただしき家では着物が絶対。
窓から外に目を向けると、見慣れない服を身につけで歩く女子たちが目に入る。
平民では異国の洋服なるものは手にはいるまい。おそらくそこそこ金のある商人の子らだろう。それ以上の財産を持っている者達は皆、貴族達だ。余程の阿呆でなければ日本の衣装である着物を身につけるのが筋というものだろう。
むしろ、位の高い家が着物を着ていななどはありえない。評判が下がる一方だ。
日本国民は誇りがないのだろうか。
ため息をつきかけるが、慌てて飲み込む。
ため息をすると疲れがどっと出て気分が悪いのだ。
秋に入るがまだ蒸し暑い。懐から扇子を取り出し軽く扇ぐ。
………やっぱり暑い。
生ぬるい風が気持ち悪い。葵はまだだろうか…。
今日は大事なお客がくるということで久々に外へ出れた。
だがその人はまだ来ていない。報告が来ないのだ。
なぜ公家の娘が異人を相手にしなければいけないかというと、わたしは英語が話せる。
ほぼ完璧に。
西洋文化がまだ浅い時から父に教育されてきたからだ。まだまだ英語と日本語の両方が話せる者は少ない。
そのため、わたしは今公家の娘としてではなく公家の遣いとして此処にいる。