また、針が時を刻んだ。
静かな空気にそれは響いて、カチリ、鼓膜を確かに震わせる。
無色無感情の少年の
「………昔 自分が」
いま、瞳には、心には、
「遊んだ場所も育った場所も生まれた環境も幼い時の記憶も本当の家も親の顔も自分の名前も」
一体何が映されているのだろう。
「何も、覚えていないのに」
「なにがなつかしいんだって」
「お前も」
どこに向かって生きているのか、少年自身も、もしかしたら分かっていないのかもしれない。
「お前も笑うか?」
銀の髪と灰の瞳がかすかに揺れて、とても、とても、綺麗だ。


