「それにそうだ、これからずっと君に会いに来れば、僕は君に忘れられないね?」 「その前にお前が忘れるよ」 「分からないじゃないか」 「分かるよ。それは分かる」 思ったよりも少年はまっすぐで、素直な子供だった。そしてその心は、どうやらとても、硬いらしい。 「顔も名前も思い出せないけれど」 思い出を大切に掘り起こすと、たしかに浮かんでは消える、存在が。その形を、輪郭をなぞっても、見つけ出すことはできない。けれど、過去にもいたんだ。確かに。同じような言葉を、聞いたことがある。