歳も、得意なことも、好きなことも。 他の何を聞いても、まるでそれしか言葉をしらない幼子のように「さあ」と、それだけしか、無機質な返事しか返らない。 「もしかして、話したくない?」 「別に。覚えてないだけ」 さっきの少年を、思い出した。 ああ、そういえば、僕もあの問いに答えていなかった。 「笑わないよ」 「え?」 「僕は君が毎日ここに来ていたって、笑わない」 「……あ、そ」 蒼のマフラーに顔を埋めるしぐさは、とても年相応には見えなかった。もっと長い長い時を、歩んできたようだ。