テーブルにある玲二が忘れていった煙草と、その上にあるライターを手に取り首輪の細工、結束バンドを少しずつ燃やし溶かす。


カチリ、親指に力と念じを込めて「あっつ」と焼ける肌に唇を噛み締めた。

熱いし臭いし気が狂いそうだけど。


溶けていくプラスチックからは異臭が半端ない。指先で少しずつ確認しながら一つ一つ焼き溶かす。


―――あと少し


チリチリと焼ける肌の匂いに吐きそうだった。だけどそれを我慢して何時間も手探りで燃やし続けた。指先が痺れようと肌が焼け焦げようとチャンスは今しかないと強い使命感と気力で頑張った。


指の感覚がほとんど無くなった時、ライターのオイルも底をつきた。何度も付けたけど付いてくれなかった。

もう諦めるしかないんだ。

一気に押し寄せた絶望にあたしは強く口を閉ざし、最後の足掻きで首輪をがむしゃらに引っ張った。

「なんで取れないわけ!?いい加減にしてよ!もう嫌!」

喚き散らかしながら首を掻きむしるように「あー!」と滅茶苦茶に指先を暴れさせた。


すると、パチンとはじけた音がした。
「え?」と腑抜けた声を漏らしながら指でなぞって確認したら………


「外れ……た?」


結束バンドが溶けて細くなってたみたいで切れたらしい。後は首輪のベルトを外すと締め付けていた圧迫感から解放され、火傷でヒリヒリと痛み出す。

最初は南京錠が付いてたからどうせ外れないって心配してたけど鎖と首輪を繋ぐ為だけのものだったから、こうして地道な作業を乗り越えて自由を得た。


「逃げなきゃ……」


次にやるべき事は脱出。
服は数枚ある。どれも生活には必要だったが今は着替え1枚あれば他は要らない。


季節もあやふやだし身体中の傷を隠す為に長袖に着替えた。


荷物は要らない。邪魔になるだけだ、携帯だけあれば……どうにかなる。

携帯は常に充電器に差さってるから充電の心配はない。


そっと外の様子を確認してからドアを開ければ――


「……真っ暗」

久しぶりに見た世界は暗くて深い闇に包まれていた。