「まさごせんせー、すき〜」

 さくらが嬉しそうに、真砂に抱き付く。
 ちょっとほんわかした空気になったが、残念ながら、それは一瞬。
 途端にわらわらわらっと、周りの園児がまた真砂に群がった。

「まさごせんせー、ぼくも〜」

「だっこして〜」

 有名鳥映画アゲイン。
 しかも今は皆、抱っこをせがんでいるので、リアルに真砂に取り付く。

「ちょ、ちょっと待てっ……。そんないっぺんに抱っこ出来るかっ」

 群がる子供に埋れながら、真砂が叫ぶ。
 そんなすったもんだの教室内を、廊下から見つめる一つの影があった。
 何やらその辺りだけ、どす黒い邪(よこしま)な空気が漂っている。

---まあぁぁっ。いつもながら、子供は羨ましいわぁ。真砂先生に、ぎゅうっとされるなんて。ああ、あたしも真砂先生にキャッチされたい。このクラスの子供になりたいわぁ。そしたらどんだけ真砂先生に触っても、許されるもの---

 年長クラスの担当、あきである。
 廊下の隅から、真砂の教室を覗いている。
 いつものことだが、にやにやと、己が子供になって真砂に纏わり付いている場面を想像しているのだろう。

---そうだ。年少さんはお昼寝タイムがあるわ。きゃあ、真砂先生と添い寝のチャンスよ! 寂しい〜とか言って、真砂先生にきゅっとして貰いつつ寝るのよーっ!!---

 そう心の中で叫んだ瞬間、あきの目の前に血が飛んだ。
 ぱっと廊下の壁に血飛沫。
 ホラーである。

---いけない。興奮し過ぎたわ。コントロールを失っちゃった---

 そそくさと、あきは己の鼻を押さえて上を向いた。
 鼻血である。
 たまたま廊下に出た子が、その血に気付いて泣き声を上げた。

「あきちゃんせんせー、ちーーっ!!」

「え、どうしたのさ。大丈夫?」

 すぐに捨吉が駆け寄ってくる。
 鼻を押さえたまま、あきはこくこくと頷いた。

「だ、大丈夫。鼻血だから。貧血かも」

「あき先生、よく鼻血出すよね。大丈夫? 寝てなよ」

 捨吉に促され、あきは医務室へ。
 真砂に連れて行って貰いたいところだが、生憎真砂は、いまだ子供たちの餌食だ。
 それに。

---今真砂先生に抱き上げられたりしたら、噴水の勢いで鼻血が出るかもだわ---

 別に捨吉に抱き上げられているわけではないのだが、あきはちらりと真砂を見、ふふふ、と不気味に笑うのであった。

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 あれれ、初めはこれの半分ぐらいだったのに、さくらちゃんをもう少し、と思ったのと、あきのエピソード(恒例だな)を入れたら、やたら長くなってしまった。
 さくらちゃんは、どこから引っ張ってきたのか、わかる人はわかる……かも。
 す、すみません。ほぼ名前だけを拝借しました。……まるちゃんも( ̄▽ ̄;)

 子供相手だと、結構真砂は壊れるかも。まぁドSっぷりは出せないからな。
 お子様といっても、深成ぐらいがいいかもです。……ロリコンめ( ̄▽ ̄)←あっ

2014/06/18 藤堂 左近