「……で、今日の議題は何なんですか」

 低く言う真砂に、ひたすらたこ焼きをひっくり返していたミラ子社長は、ちらりと目をやった。

「固いこと言いなや。今日はパーティーやって言うてるやろ」

 ずい、と皿に盛られたたこ焼きを突き付ける。

「たこ焼きパーティー。略してたこぱ、や。タスポちゃうで。禁煙やで、ここは」

 言いつつ、清五郎にも皿を渡す。

「なるほど、パーティーだから、正装したわけですか」

「そや。まぁ折角のお客さんを招いてのランチやしなぁ。ラテ子が是非とも、お二人さんには燕尾服を着て欲しいって言うもんやから。それにしても、いやはや眼福眼福。さすがラテ子やわぁ。どや? 真砂課長。ラテ子と一曲、踊ってみんか?」

「舞いなら舞えますがね、ダンスは不得手です」

「舞いかぁ。舞いでも良かったな。よっしゃ、今度は袴で舞ってもらおう。舞いをひとさし所望する!」

 びし、とお玉を突き付けるミラ子社長に、真砂は目を伏せた。
 僅かにその眉間に、皺が寄っている。

「ミラ子社長。その際は、是非また呼んでくださいね!」

「そやな。そんときゃシュレ子も呼んだろう。紫ちゃんも来るかな?」

 うきうきと言う社長とラテ子に、男二人は疲れ気味だ。
 これは、とっとと出されたたこ焼きを平らげて、さっさとお暇したほうが身のためかもしれない。

「パーティーの内容はともかく、社長のたこ焼きは美味しいですね」

 さりげなく話を逸らす清五郎に、ミラ子社長は檜扇を広げて、おほほほ、と笑った。

「そやろ? 伊達に百個焼いてへんで。そういやマサ社長も、たこ焼き上手いんやってなぁ。今度は是非とも、社長もお呼びしてパーティーせなあかんな。ああ、でもあの社長、何かクリーム系とか入れそうやなぁ。甘党やし」

「ミラ子社長、あんまり変なこと言わないでくださいよ。まず間違いなくバレないとは思いますけど」

「悪口ちゃうで。たこ焼き言うても、奥が深いんや。チョコとか入れたりするしやな」

 密かに真砂が、口を押さえた。
 たこ焼きにチョコ……。
 考えただけでも気持ち悪い。

 が。

「真砂課長。何か勘違いしてへんか? たこ焼きの中にチョコ入れるんちゃうで。幾ら何でも、それはないわ。タコは入れまへん」

「そうですか。それは良かった」

 タコの代わりにチョコが入ったとしても、自分は食べないが。
 そう心の中で付け足し、真砂は目の前のたこ焼きを平らげることに専念する。