「ごめんて。そないに怒らんで」

 月曜日の社長室で、ミラ子社長はひたすら頭を下げていた。
 その横で、鎌之介も同じように頭を下げる。

「もうまっぴらごめんですよ」

 その前で、腕組みした真砂が憮然と言う。

「いやほんま、肝を冷やしたわ。うちのエースを失うわけにはいかんし、可愛い派遣ちゃんを悲しませたのも悪かった。まさかここまで真砂課長が嘘つかれへん人やなんて思わんかったしなぁ。浮気できへんな」

「しませんよ」

「される側か。意外やな」

 にやりと笑うミラ子社長を、真砂がぎらりと睨む。
 相手が社長であっても容赦ない。

「ま、とにかく今回のことはすまんかった。けどお陰で鎌之介のほうも解決したみたいやし、良かった良かった」

「解決したんですか」

「解決っつーか。まぁめでたしめでたしやな」

 男同士だ、ということはいいのだろうか。

「そこのところは、本人が良ければもうよろしい」

 ちらっと真砂が思ったことに気付き、ミラ子社長はため息をついて言った。
 女装好き、というところから、こういうことも想定していたのだろう。

「とにかく今回はご苦労さん。丁度ラテ子が来てな、お土産あげるわ」

 ラテ子のところの社長の見立てか、ずいっと出されたのは五島軒のケーキ。

「私からも、お礼です。彼女さんによろしく」

 鎌之介から渡されたのもお菓子。
 社長から深成のことを聞いたのだろう。
 というか、真砂は今気付いたのだが、社長にも自分たちの関係はバレているのだろうか。

「ほんま悪かったわ。代休取って、派遣ちゃんをたっぷり可愛がってあげや」

 にやにやと言うミラ子社長に微妙な表情を返し、真砂は社長室を後にした。



「社長~。なかなか今回はスリリングでしたねぇ~」

 真砂が去ってから、奥のパーテーションからラテ子が姿を現した。

「ほんま、ちょっとは波風あったほうがいいかとも思ってんけど。これ、相手が鎌之介やなかったら、まじでヤバかったで」

「確かに。ほんとの美女の彼氏役が必要になったら、清五郎課長にしましょう」

「え~? 言うたやろ、あそこかって、わからんで?」

「清五郎課長のところは、壊れたら私が頂きますよ」

「おっ? ラテ子は清五郎狙いか。そやなぁ、清五郎は万が一お千代さんと別れたかて、あそこまで落ち込まんやろしなぁ」

「ミラ子社長は、弱くなった真砂課長でもいいんですか?」

「あれはあれで、きゅんとする」

「案外うざいかもですよ」

「まぁ今回のことで、真砂課長を弱らすには、派遣ちゃんを奪えばいいと判明したわけや」

「真砂課長にも弱点があったんですねぇ。清五郎課長にはあるんでしょうか」

「難しいな……。清五郎のほうが、弱点ってないかもな」

「あの爽やかさは欠点でもあるけど、弱点ではないですもんね。ちっ」

「こらこらラテ子。秘書が舌打ちなんかしたらあかん」

「あら失礼しました。思わず黒ラテ子が顔を出してしまった」

「清五郎もたまに黒くなるしな。二人とも、敵に回したくないわ」

 本人たちがいないことをいいことに、社長室では好き勝手な会話が続くのであった。

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 真砂嫉妬編2。
 いや、今回は本気で焦らせて欲しい、とのことだったのですが、そのためには深成を不安にさせないとでしょ。
 何もなく真砂が物凄い嫉妬するほど、深成も軽くないし。

 てことで真砂に浮気の影を落とし、深成の疑惑を膨らませました。
 そしたらまぁ、あれよあれよと真砂が弱く。
 真砂、深成に振られたら生きていけないんじゃないの( ̄▽ ̄;)。

 『君影草』のほうで最後に真砂と戦った鎌之介くんが名前的に丁度いい、と、女装趣味の男の娘に。
 そしてそのお相手に才蔵を持ってくる辺り。
 十勇士ファンに怒られそうだ。

 ていうか、真砂は嫉妬する元気もないほど弱ってしまいました。
 そしてその分、その後は甘々度がMAXに。

 最近左近も糖分不足でよ、もうこれでもか、といちゃいちゃべったりさせてしまった( ̄▽ ̄)。
 真砂がさぁ、深成と離れたがらないんだもんよ。

 そういや深成の相手にはオネェ片桐を採用しましたが、これ、宗十郎では話にならんと思ったので。
 片桐のような軽さがないのでね、宗十郎だとほんとにややこしくなりそう。
 何気に真砂と似たタイプだから、血を見るかもしれないし。
 どちらも本気にならないと、まともに女子の相手をしませんからね。

 片桐は深成のことを『子兎ちゃん』と呼んでましたが、『子猫ちゃん』は玉乃なんでしょうね( ̄▽ ̄)。

 それにしても久々の小咄、楽しかった~。
 やっぱりこういうのは何より楽しい。
 いつもの軽く倍の速さで書けるしね。
 ではまたリク求む( ̄ー ̄)。

2017/11/26 藤堂 左近