「何かお互い、強烈な奴を相手にしてたんだな」

 家に帰ってゆっくりお風呂に入った後でまったりしつつ、真砂がしみじみ言った。

「そうだねぇ。何か、お互い同性を相手にしてたような」

「俺はそうだが、お前は違うだろ」

「え~? でも片桐さんは男の人ってあんまり思わないよ」

「……お前の、その隙が心配なんだよな」

 ちろ、と深成を見上げる真砂に、深成は、ぷぅっと頬を膨らませた。

「隙じゃないもん」

「隙だよ。お前が男として見てなくても、向こうが男としてお前を見てるってこともあるんだからな。ちょっとは警戒しろよ」

「してるもん。いくら何でも、こんなこと真砂にしかしないもん」

 二人はソファに座っているのだが、真砂の頭は深成の太ももにある。
 膝枕なわけだ。
 夕べから、真砂のべったり感は半端ない。

「俺もこんなこと、お前にしかしない」

「じゃあ、こんなに甘えんぼの真砂、わらわしか知らないんだね」

 ちょっと面白そうに言うと、真砂はむくりと上体を起こした。
 だが離れることはせず、今度は深成の肩に頭を乗せるように、首筋に顔を埋めた。

「他の女で、俺がこんなに弱くなるわけないだろ。自分でも引くわ」

「いっつもわらわがひたすら真砂に甘えてるから、わらわばっかり真砂が好きなんだと思ってたけど」

「そんなこと思ってたのか」

 頭を起こして、真砂が驚いたような顔をする。

「真砂の愛情は感じるけどさ、わらわと比べたら、あんまりあからさまじゃないし」

 そうだろうか。
 真砂も何気にあからさまだと思うのだが。

「それに真砂、今回わらわが真砂の前で片桐さんのことめっちゃ褒めたのに、何の反応もなかったじゃん。凄く悲しかったんだから」

「反応しないわけあるか。会社だったから抑えたが、あれから頭が真っ白で、何も考えられなくなった」

「メールぐらい、くれてもいいじゃん」

「……そのときは由利のこともあったし。俺がそんなに怒る資格もない、とか思って。土曜が終われば全部話そうと思ってたから、とにかく早く由利のことを終えたかった。でもあの店でお前が泣きながら出て行った後、由利のことが済んでから電話したんだぜ。繋がらなかったけど」

「あ、前の日から充電してなかったから、電池切れちゃってて」

「……戻ってくれて、ほんとに良かった」

 しみじみ言い、真砂は身体を傾けて、深成を抱きしめた。
 そして、キスをしながら身体を倒す。

「わらわ、戻ってくるの凄く緊張した。チェーンかけられてたらどうしようとか考えちゃって。わらわ、真砂の気持ちも考えないで、大っ嫌いとか叫んじゃったし、怒ってるかもしれないし」

「あれは凄い応えたぜ。お前をあんなに怒らせて泣かせたっていうのが、こんなに応えるとは思わなかった」

 キスを繰り返しながら、真砂は深成の髪を掻き上げた。

「ごめんな」

「うん、わらわも。真砂、大好き」

 きゅ、と抱きつく深成を優しく抱きしめ、真砂はそのまま、深成を抱き上げてリビングを出た。
 寝室のドアを開け、ベッドに倒れ込む。

「真砂……」

「しっかり抱いてやれって、あの店長も言ってたろ」

「そういうとこだけ素直なんだからー」

 じゃれているうちに、するするとパジャマが脱がされる。

「あ、明日はお仕事なんだからねーっ」

「十分お前を感じないと、仕事もできん」

「もーっ! 何言ってるのーっ」

 わたわたと暴れる深成をものともせずに一通り愛撫した真砂は、一旦身体を起こすと深成に顔を近付けた。

「深成、好きだよ」

 真砂の言葉に、深成は大きく目を見開いた。
 せがまないと言ってくれなかったのに、真砂自ら、どさくさ紛れでもなく、きちんと言ってくれた。

「真砂っ……」

 がばっと抱きついてくる深成を抱きしめ返し、二人は心行くまでお互いを感じ合った。