「深成ちゃん、そんなに六郎さんにべったりだったの? だって、深成ちゃんは子供でも、六郎さんはもうほとんど大人でしょ?」

「うん、そう……かもね。わらわはそんなこと、全然考えてなかったけど」

「六郎さんも困ったんじゃない? いくら小さい子でも、お風呂とかまで一緒に入るわけにもいかないでしょ?」

 言えば言うほど、あきの目尻は下がっていく。
 だが深成は、きょとんと首を傾げた。

「え〜? 考え過ぎだよ〜。わらわ、普通に構って貰ってたよ? いっつも一緒に寝てもらったしさ」

 ぶは、と六郎がビールを吹き出す。
 その様子を、あきは面白そうに眺めた。

「だって、ほんとの妹じゃないじゃない。他人だよ?」

「そんなの、気にしなかった。わらわ、六郎兄ちゃん大好きだったもん」

 さらっと言う。
 六郎はどうしていいものやら、少し後ろに下がって、そわそわと落ち着きなく視線をさまよわせた。

「深成ぃ〜、駄目だよ、そんな簡単に好きとか言っちゃ〜」

 捨吉が、相変わらず深成の頭をぐりぐりと撫でながら言う。
 結構酔っているのか、捨吉はほとんど深成を抱き寄せているのだが、何故か全くいやらしさがない。
 深成も捨吉を押し退けることなく、そのまま僅かに口を尖らせた。

「え〜、そう? あんちゃんも好きだよ?」

「えへへ〜、もう、深成は可愛い可愛い」

 へらへらと、捨吉は笑いながら深成を撫で回す。
 この二人こそ、本当の兄妹のようだ。
 ここまでいやらしさなく、べたべた出来る男女がおろうか。

「……やってられん」

 ぼそ、と呟き、真砂が立ち上がった。
 その辺の空いた皿やコップを、手早くまとめる。

「あ、真砂。手伝う〜」

 深成がぴょこんと立ち上がるが、ふらりとバランスを崩した。

「危な……」

 支えようと、立ち上がろうとした六郎より早く、深成は真砂に腕を取られた。
 ぐい、と引っ張られ、深成は、どん、と真砂の胸にぶち当たる。

「何をふらついてる。お前、またあれっぽっちで酔ったのか」

 片手で深成を支えたまま、真砂が言う。
 支えたものの、優しさは全く感じられない。
 馬鹿にしたように言う真砂に、深成は、ぶぅ、と膨れた。

「今日はビールも飲んだもんっ」

「俺の一口だけだろうが」

「飲み慣れてないんだから、しょうがないじゃん」

「普段から、オレンジジュースしか飲まないからだ」

 お子様が、と言い、ふふんと笑う真砂に、きーっと深成が掴みかかる。
 それを、真砂は難なく避ける。
 その様子を、片膝を立てたまま、ぼんやり見ていた六郎は、やはりざわざわと心に波が立った。

 別にべたべたしているわけでもないのに、やはり捨吉よりも、真砂とのやり取りのほうが、世間的な恋人同士のじゃれあいに見える。
 真砂も何かと深成を馬鹿にするわりには、まんざらでもなさそうだ。