眩しい光に、深成は目を開けた。
 自分の部屋に、明るい日が差し込んでいる。

「ああ、よく寝た。気持ちよかったなぁ」

 ふわぁ、とあくびをし、抱き付いていたものに、うにゃうにゃと顔を擦り付ける。
 いつもうさぎを抱っこしているので、それに顔を擦り付けるのは癖である。
 だが、今朝のうさぎはやけに固い。

「おいこら。いきなり顔を擦り付けるな」

 いきなり、うさぎが文句を言った。
 しかも、やたらと低い声だ。
 ちろ、と視線を上げると、真砂が見下ろしていた。

「……あ、そっか。今日のうさちゃんは、課長だった」

「誰がうさぎだ。ったく、幸せそうに眠りやがって」

「あれれ? 課長、もしかして寝られなかった?」

 ようやく、深成は少しだけ上体を起こした。
 真砂の上に乗っているわけではないが、思い切り腕枕で寝ていたようだ。
 今も、ぺとりと身体は引っ付いている。

「いや、意外とよく寝られたけどな。抱き枕が良かったのかもな」

 言いながら、真砂が上体を起こす。
 つられて深成も起き上った。

「……いつまでくっついてる」

 座った状態でも、深成は真砂にぺとりとくっついている。

「ん……何か、勿体ないなぁって」

「?」

 怪訝な表情の真砂をちらりと見、深成は、ぱ、と顔を上げた。

「ね、課長。頭なでなでして」

「は?」

「いいから」

 ずいっと頭を突き出す深成に引きながらも、真砂は、ぽん、と彼女の頭に手を当てた。
 が。
 
 思い切りぐしゃぐしゃと、髪の毛を乱される。

「違うでしょーっ」

「一緒だろ」

 見事に爆発した頭で、ぷんぷんと深成はお風呂を沸かしに、浴室に向かった。

---ま、夜みたいに優しく撫でられたら、またわらわ、課長に抱き付いて離れたくなくなっちゃうだろうしね---

 何か、物凄い課長のことが好きみたいだ、と思うと、さすがの深成も少し赤くなった。

「課長。お風呂どうぞ。おせちの用意しておくから」

「ああ」

 真砂が浴室に消えてから、深成は炬燵の上に、おせち料理を並べていった。