が、六郎から言わせると、その分性格が壊滅的に悪い。
 六郎が見た限りでは、優しさというものは皆無だった。
 偉そうだし、口は悪い。

 深成にちょっかいをかけると言っても、常に小馬鹿にした態度だ。
 甘やかな雰囲気などはないのだが。

---そういう奴ほど、危ないのだ!!---

 ということらしい。

 さらに真砂には、前の別れ際に、意味深なことを言われている。

『この次お前が来る頃には、こいつは‘女の子’から‘女’になってるかもな』

 こいつ、というのは、紛れもなく深成のことである。
 そう言って、真砂はにやりと意味ありげに笑ったのだ。
 考えたくないが、それは『己が手を付ける』と宣言したも同然なのではないか。

 別に深成は真砂のことを特に何も言っていないし、頼りにしているかもしれないが、好いてはいないはずだ。
 ……多分。

 それでも気になるのは、……好いてはいないが、それはあくまでLoveではない、と思うだけで、Likeではある……ような気がするのだ(おそらくLikeではあるのだが、それすらあっさり認めたくはないらしい)。

 そもそも恋愛感情に疎い深成のこと、何かのきっかけで真砂に傾くかもしれない。
 何せ相手は、性格はともかく、見てくれは相当良いのだ。
 それを武器に、強引に迫るかもしれない。

---深成ちゃんは幼いからな。あの男に強引に迫られたら、怖くて逆らえないだろう。手籠めにされないためにも、私が深成ちゃんを守らねば!---

 六郎の中では、すっかり真砂はいたいけな深成を狙う、極悪非道のエロ野郎なのだった。

「あ」

 六郎の心の誓いにも気付かず、必死でパフェグラスの底に詰まったコーンフレークをほじくっていた深成が、ふと顔を上げて窓の外に目をやった。

「うわっ!! 何これ! すっごい雨!!」

 スプーンを落とす勢いで驚く深成に、六郎も窓を見る。
 いつの間にか、先程降り出した雨は、前が見えないほどの土砂降りになっていたようだ。
 風も酷く、いろんなものが飛び交っている。

「凄いな……。帰れるかなぁ」

 六郎が呟いたとき、深成の携帯が鳴った。

「あ、あきちゃんだ。……え、帰れそうもないから、お友達のところに泊まるんだって」

 メールを読みつつ、深成が言う。
 あきも今日は、少し遠いところの友達のところに遊びに行っているのだ。
 千代は元々海外旅行中。