「はぁ? お前が訓練生?」

 眉間に一層深い皺を刻み、真砂は千代に目を向ける。
 そそくさと立ち上がり、こほんと咳払いすると、千代はおもむろに、さらっと手を深成に向けた。

「確かに、今回の客室乗務員訓練生、深成です。今わたくしが指導しておりますわ」

「よろしくお願いしまぁす」

 ぺこりと深成が頭を下げる。
 真砂は片腕を操縦席の背に乗せて、じろじろと深成を頭の先から足の先まで眺めた。

「お前、ほんとに基礎試験をパスしたんだろうな?」

「もちろん。でないとこの制服は着られませんっ」

 むん、と胸を張る深成だが、どう見ても子供がお遊戯でそういうものを着ているようにしか見えない。
 千代のように、制服プレイをそそるような色気は皆無だ。

「身体検査もパスしたのか? ほんとに160cmあるのかよ」

「パスしたってことは、あるんでしょ~」

 ぷぅ、と膨れるところもお子様そのもの。

 客室乗務員の身長は160cmのはず。
 とてもそんなにあるようには見えないが、深成の言う通り、試験をパスしたということは、あるのだろう。

 真砂は渋い顔のまま、黙り込んだ。

「ところで深成。何でこんなところに?」

 千代がとりあえず話を逸らすべく、深成を振り返った。

「ああ、休憩時間にちょっとでもお勉強しようと思って格納庫に来たら、おっきいジャンボ機があったからさ。こんなでっかい飛行機を目の前で見られることなんて、そうないもの~。チャンスだと思って、入ってきちゃった」

 客室乗務員訓練生のくせに、理由もお子様だ。
 飛行機など、これから嫌というほど目にするだろうに。

「でもさ。何でこんなでっかい鉄の塊が空を飛ぶんだろうね? 不思議だな~」

 コックピット内をきょろきょろしつつ、無邪気に言う深成に、真砂の額の辺りが、ぶちっと音を立てた。

「阿呆!! お前の脳みそはどうなってるんだ!! そんなことで、客室乗務員が務まるとでも思っているのか! そんな基礎知識もなく、事故のときに対処できると思うのかぁ!!」

 真砂の怒号が響き渡る。
 ひぃ、と小さく叫び、深成は千代の後ろに隠れた。

「ひ、飛行機の構造なんて、客室乗務員には必要ないじゃん~」

「馬鹿! 基礎は知っておかないと、あらゆることに対応出来ん! 貴様、ほんとに試験を受けたんだろうな?」

「う、受けたもん~っ」

「落ちたんじゃないのか! もう一度、俺が試験してやる! ていうか、まずは身体検査だ!!」

 そう言うと、暴れる深成の首根っこを掴んで、真砂はコックピットを出ていった。

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 パイロット編。う~ん、難しいぞぉ。
 例の如く調べたんですけどね、やっぱ詳しくはわからない。
 『研修風景』と銘打ってるのに、研修風景ないじゃん( ̄▽ ̄)

 そして特にパイロットに限定しなくてもいい出来になったのはお気づきだろうか。
 肝心の訓練風景がわかんないからね、書けないの。それでも無理から書く辺りが小咄なのです( ̄・・ ̄)b

 この真砂は、より本編に近いかも。身勝手さといい、口の悪さ(それはいつものことか)といい。

 本文にもありますが、客室乗務員の身長は決まりがあるんですね。視力も良くないと駄目なんだって。
 目はともかく、身長は……深成はないだろ( ̄▽ ̄)150も、あるかないか……。

 あまりにリクエストからかけ離れてしまうと、もうお笑いに走るかエロに走って誤魔化すしかないね( ̄▽ ̄;)
 恰好だけを想像して楽しんでくだされ……。

2014/10/30 藤堂 左近