「……安心?」

「何て言うか、とにかく、わらわが甘えるのは、課長だけなんだもんっ」

 よくわからん、と思いつつも、真砂は深成に顔を近付ける。

「か、課長こそっ。今日居残ってるのが千代だったら、どうしたのさっ。それこそ千代は課長のこと大好きだから、お家だって喜んでついてくるでしょっ」

「知ったことかよ。俺だって、誰でも家に連れ込むようなことはせん」

 きょとん、とする深成に、真砂はさらに顔を近付けた。

「送ることもしないね」

 言うなり、真砂は深成にキスをした。
 真砂の唇が触れた途端、深成はぎゅっと目を閉じた。

 何度か唇へのキスを繰り返し、やがて真砂の唇は、深成の頬・耳・首筋と移動する。
 初めは硬かった深成の身体から、力が抜けた。

 ゆっくりと深成のシャツのボタンを外し、胸元に唇を付けた真砂は、ふと違和感を覚えて目の前の深成の胸を見た。
 規則正しく上下する白い肌。

 まさか、と思って視線を上げると、深成はくぅくぅと寝息を立てていた。

「……」

 時間が止まったように、しばし真砂は、じっと深成を見た。
 たっぷりと時間が経ってから、そろ、と深成の上から身体を退ける。

「……あり得ない……」

 ぼそ、と呟き、大きくため息をつく。
 この状況を切り抜けるための狸寝入りなどではない。

 むにゃむにゃ、と口を動かすと、深成はころりと横向きになった。
 真砂の横で、幸せそうに丸まる。

 深成が転がったのは、真砂のほうへ。
 この行動だけで、本気で寝ていることがわかる。

 真砂は布団を引っ張ると、ばさ、と深成にかけ、自分も横になった。
 片肘をついて、隣で眠る深成をまじまじと見る。

 警戒心など微塵もなく、すやすやと眠る深成は、己が今男と同じベッドの上だということなど、忘れてしまったかのようだ。
 ここまでの警戒心のなさでは、特に真砂でなくてもこういう態度を取るのか、とも思う。
 だが。

---俺にしか甘えないとか言ったな---

 それを深成が、どういうつもりで言ったのかは、よくわからない。
 特に深成に優しくした記憶もないし、今まで甘えられた覚えもない。

---まぁいい---

 ふ、と息をつくと、そろ、と真砂は深成を抱き寄せ、目を閉じた。

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 (一部で)お待ちかねの、嵐の夜編です( ̄▽ ̄)

 これ書きつつ、ふと思ったんだけど、こういうのはシェアハウスバージョンのほうが良かったかも。上司と部下だしなぁ。
 ここでの王道といえばそうだけど、はっきり言うと、それってあんまりよろしくないのでは。

 そして今回、途中で深成は寝ちゃったけど、これ起きてたら……どうなったでしょうか( ̄▽ ̄)

 そういや結局、真砂と深成がちゃんとくっついたのって、本編だけですなぁ。
 あ、キャバクラバージョンでは何やらやってましたが、あれだって結局恋人になったのかどうか。
 ていうか、もしかしたら今回のように、最後までやってないかも(*´艸` )

 真砂の忍耐力に全てがかかってる感じ。大人な男は辛いね。
 本編ではこういう忍耐力はないに等しいのにね( ̄▽ ̄)

2014/09/26 藤堂 左近