「そ、そんな格好のくせに、一緒に寝るとか言うな……」

 絞り出すように言われたことに、深成はおろおろとなる。
 その態度からして、何故真砂がこんなに怒っているのか、わかってないようだ。
 困ったように、深成はそのまま、ぺこりと頭を下げた。

「ごめんなさい。あの、どうしても嫌だったら、わらわ、床でもいい」

 言いつつ、ごそごそとベッドから降りようとする。
 が、その深成の腕を、真砂が掴んだ。

「床に寝かすぐらいなら連れて来ん」

 そう言って、引っ張った腕に力を入れ、深成を投げ出すように、ベッドに戻した。
 そして深成に覆い被さるように、上から彼女を見下ろす。

「この嵐の中、残ってるのが捨吉だけだったら、お前はどうした?」

 真砂の下で、深成が少し怪訝な表情になる。

「捨吉だって一人暮らしだぜ。俺と条件は同じだ」

 ああ、と合点がいったように、ぽん、と深成は手を打った。
 真砂に押し倒されている状態なのに、やはりわかっていない、呑気な態度だ。

「そっか。言われてみればそうだね」

 軽く言う深成に、僅かに真砂の目が鋭くなる。

「んでも……」

 打った右手を左手で包み、深成はちろ、と視線を上げた。
 一瞬だけ真砂と目を合わせ、くるりと身体を反転させて背を向ける。

「あんちゃんがお家に呼んでくれても、わらわ一人だったら行かない」

「何故だ。俺よりよっぽど、あいつとのほうが仲良いだろ」

 少し身体を倒して、真砂が言う。
 うつ伏せになっていた深成が、いきなりくりっと振り向いた。

「課長。わらわをそんな軽い子だと思ってるの。わらわ、誰にでもついていくような子じゃないもんっ」

「菓子をちらつかせれば、簡単に確保出来そうだがな」

「ちょっと。一体課長は、わらわをいくつだと思ってるの?」

「それは俺も思っていた。一体お前は何歳なんだ」

 そう言う真砂の身体は、すでにほとんど深成と密着状態だ。
 ここまでされて、初めて深成は、あれれ? と己の状況を考えた。
 ベッドの上で、男前の上司に押し倒されている。

「お、おやぁ? あやや、か、課長っ……」

「身体はちゃんと大人なのか?」

 耳元で真砂の声がした途端、うなじに柔らかいものが触れ、深成の身体に電流が走った。

「うにゃんっ!!」

 身体中の産毛が逆立ち、深成は思わず枕に額を押し付けた。

「軽くない、と言われたって、そんな格好で平気な奴なんざ、そういないぜ」

「ち、違うもんっ。わらわ、何か課長だったら安心するんだもん」

 一瞬、真砂の身体が離れた。
 ほ、と息をつき、深成はもう一度、ちらりと振り向くと、再びくるりと反転して、身体を戻した。
 真砂が見下ろしている。