---ああ……。何ということだ。生徒の下着を見てしまうなんて、教師としてあるまじきことではないか……---

 保健室のベッドの上で、夢うつつに六郎は、ずっと悶々としていた。
 だんだん意識が覚醒するにつれて、何やら話し声が聞こえて来、おや、と六郎は薄く目を開けた。

「大体お前は考えなさ過ぎだ。どこの世界に下まで脱ぐ奴がある」

「だって、泥んこだったんだもん。先生の上着は、わらわにしたら大っきいし、丁度良い丈だったんだもん」

 六郎の頭のすぐ横で、真砂と深成が言い争っているようだ。

「先生だって、抱えるならもっとちゃんと抱えてよ。わらわ、落ちそうで怖かったんだから〜」

「お前が逃げ回るからだ。捕まえてから鉢巻巻かんといかんかったから、しょうがないだろう」

「だって先生、凄い勢いで向かって来るんだもん。ハンターどころじゃないよ。狼さんみたいで、わらわ、ほんとに羊さんの気持ちになっちゃったんだから〜」

 ぶーぶー言う深成に、六郎は目を閉じたまま、ふふ、と笑った。

---深成ちゃんは可愛いな。狼さん、か---

 微笑ましく深成の言葉を聞いていた六郎だが、生憎彼女の相手をしているのは真砂である。
 そんな六郎とは真逆に、ばっさりと斬る。

「阿呆かお前は。そういうレースだってことぐらい、わかってただろう。大体お前が大人しく俺のほうへ来れば、俺だっていらん体力を使わずに済んだんだ」

「……おいっ」

 思わず六郎は、布団を跳ね除けて起き上がった。

「怖がってた深成ちゃんに対して、その言い草は何だ。大体君は、物の言い方というものがなっとらん。まるで深成ちゃんが悪いと言っているようではないか。深成ちゃんを責める前に、怖がらせたことを詫びるべきだろう!」