〈精霊使い〉と名乗る人物が少ないのには、裏が存在した。
そう、神殿が圧力をかけているからだ。神殿の教えは精霊信仰。祈りの対象である精霊を使役する精霊使いは、一種の異端の存在。
だからこそ神殿の力を恐れる者達は、名乗りたくとも名乗れないのが現状であった。
「どうして、私にそれを話すのかな? もし私が聖職者だったら、どうする? 君は、捕まってしまう」
「貴方は、聖職者ではない。もしそうであったら、彼等のことを悪くは言わないでしょう。今までの言動を拝見していますと、どちらかというと嫌っている。それも、かなりのものでしょう」
「いい読みだ。ひとつ聞いていいかな?」
「モノによりますね」
「精霊使いは、精霊を自身の力でねじ伏せて使役していると聞いたことがあるけど、それは、本当なのかな?」
「それは、違います。どちらかというと、力を使って欲しいと頼んでいます。ですので、相性の問題があります」
「相性か……」
「なりたいのですか?」
「いや、遠慮しておく」
「賢明ですね」
ユーリッドの厳しい一言に、エリックは苦笑してしまう。
そんな何気ない変化を見落とさないユーリッドは、ますます相手に不信感を抱く。発言と行動に、共通性が見出せないからだ。
その時、彼等の耳に届いたのは割れんばかりの拍手の音。どうやら長話をしていたことにより、賛美歌が終了したようだ。
暫くすれば、礼拝堂の集まっていた人達が一斉に帰路につくだろう。その前に礼拝堂に戻らないといけないユーリッドは、エリックに別れの挨拶を送る。
「じゃあ、また会おうね」
「何しに来ていたのですか」
「勿論、君に会いに来たんだよ」
片目を瞑りながら言う台詞に、全身に鳥肌が立つ。ユーリッドは思わず叫びそうになってしまうが、懸命に堪える。
もし叫んでしまったら、その反動で精霊を呼んでしまうからだ。
エリックを嫌っているとはいえ、精霊に攻撃させるわけにはいかない。彼等は手加減という言葉を知らず、本気で力を使ってしまうことが多い。
いくら「殺しても死なない」というイメージがあるエリックであれ、下手に攻撃を仕掛けたら後々何を言われるかわからない。


