「聖職者達は、正しい教えを広めるものではないのですか? それなら、原本を述べていくものでしょう」
「何か、不都合なことがあるんじゃないか」
「それを知っているような、口振りですね」
「そうかな? 君だって知っているんじゃないか」
その質問に、エリックは同じように質問で切り返した。予想外の攻撃にユーリッドは、苦笑いを浮かべてしまう。
やはり思った以上に頭が良く、エリックは普通の吟遊詩人ではないと判明する。
それに歌うだけの職業で、これだけ物事の本質を見極める人物などそうはいない。
「貴方ほど、詳しくはないですよ。ただ、物事には裏がある。全ては、表だけとは限らない」
「いい言葉だ。私の説明は、その意味で表されるよ」
「逃げるんですね」
「切り札は、最後まで取っておく主義で。それに、君がどういう人物か知らない。お互いの正体がわかったら、腹を割って話そう」
肝心の部分は、はぐらかされてしまう。
しかし、ひとつだけ判明した。
吟遊詩人は偽りの姿で、本当の姿は別の場所にあった。ただそれがどのようなものかは、簡単に掴むことはできない。
いや、掴ませないようにしているのか。一筋縄ではいかない人物に、ユーリッドの顔が歪む。
「そんな、顔をしなくてもいいよ。いずれは、全て話してあげるから。その時は、君の正体も教えてほしいね」
「それは、お断りします。貴方に話すほどの正体は、持ってはいませんので。残念なことに」
刺だらけの言葉に、エリックは肩を竦める。ユーリッドとエリックは水と油に近いものがあるようだが、追い求めているものは一緒。
そのことは互いにわかっていたが、ユーリッドの方が彼を拒絶する。
「そうかな? 君から、精霊の力を感じ取れるけど」
エリックにしてみれば何気ない質問であったが、ユーリッドの眉が微かに動く。確かにユーリッドの側には、精霊が存在している。
それを感じ取れるというのは、頭だけでなく感性も鋭いということになる。食えない人物どころか、ユーリッドにとっては要注意人物といっていい。
「精霊使いですから」
正確な回答に、エリックの口許が微かに緩む。そもそも〈精霊使い〉という職業は、その名の通り精霊を使役することができる人物。
ユーリッドはその素質がずば抜けて高く、幼い頃から精霊と接していた。それに精霊使いは素質が大きく影響し、努力してなれるものではない。


