「物事には、限度がある。お前はそれを理解していると思っていたが……さて、他の者達がどのような反応を見せるか」
「そ、それは……」
「まあ、いい。怒るということはしない。それに、フリムには大事な立場がある。四季のバランスは崩せないし」
そう告げた後、口許を緩める。その瞬間、先程の威圧感は消え普段のユーリッドに戻っていた。
恐ろしい説教が回避されたことがわかると、フリムカーシは安堵の表情を浮かべていた。
「それより、調べてほしいことがある」
「ご命令とあらば」
「この街の変化。気の流れを――」
「では、マスター」
「これに関して確証はない。だから、その真意を調べてほしい。それに、約束事があるからね」
フリムカーシに命令を下した瞬間、ユーリッドは渋い表情を作る。
無論、彼女はその理由を知らない。
知らないが、全身から発するオーラと態度で大体のことを察することができた。
「苦手なものが、存在したのですね」
「その相手は天然だから質が悪いよ」
出会って一日しか経過していない相手をこのように評価するものではないが、正直な感想を語っていく。
「自分の周囲には、何故このような人物が集まるのか」実はこのカテゴリーの中に、フリムカーシと“誰かさん”の名前が含まれていることを彼女は気付いていない。
可愛いモノに対し、何の躊躇いもなく相手を抱き締める。こう考えると、他の四季を司る精霊が普通に見えてしまう。
といって彼等も独特の個性を有しているが、これほど強烈な個性というわけではない。
つまり、フリムカーシだけが特別であるとユーリッドは評価を下す。
「ところで、その方の年齢は……」
「僕を怒らせたいのか」
「い、いえ」
「興味か?」
「はい」
どうやら彼女は、ユーリッドが苦手とする人物が気になっているらしい。
しかし、先程の表情が恐ろしかったのか“怒る”という単語に過敏に身体を震わす。
可愛いかどうか確かめたいと思っていたフリムカーシであったが、ユーリッドの鋭い突っ込みに泣く泣く断念する。


