何ゆえ、我々に歯向かう行為を行うのか

 そう問われても、正しい答えは無い。

 真実が知りたい。

 ただ、それだけの理由で彼等は動く。

 人間が本質的に持つ「探究心」が、原動力といっていい。それに、真実の探求者は彼等だけではない。

 過去にも、同じ行為を行う者達が多くいた。

 しかし――

 今は、誰もいない。

「恐れることはない。いつかは、暴かれることだ」

「隠し通せるものではない……そうでしたね」

「そうだ。時として、知らぬという行為が罪となる。いや、知る権利を奪うことも罪である」

「聖職者どもは、何をそこまで……」

「わからぬ。真実は此処に――」

「そうですね」

 伸ばされた手が、表紙に触れる。そして脆くなっている頁を慎重に捲っていき、目的としている記述を探していく。

 一頁一頁、見落としがないようにゆっくりと時間を掛けて――

 その時、ある頁で捲る手が止まった。

 そして書き記されている内容に、全員が目を見開き言葉を失う。それはあまりにも残酷で、愚かとしか言いようがない内容が書き記されていた。

「何ということだ」

「ああ、お許しを……」

 円卓を囲む一人が、床に崩れ落ちる。このような内容は、予想していなかった。

 いや、誰も予想などできない。

 全ては底さえ見えない深い闇に等しく、明るみになった事実に吐き気が込み上げてくる。

「人は何故、これほど愚かな行為を……」

「知らぬ。だが、隠し通そうとしている意味がわかった。聖職者どもめ、偽善者面をしよって」

「所詮、彼等は自分の立場しか考えていません。ですから、真実を隠し通しているのでしょう」

「だからといって」

「ああ、隠し通しては――」

 何かを感じ取ったのか、途中で言葉が止まった。反射的に窓に視線を向けると、唇に人差し指を当て沈黙を促す。

 静寂の中に窓に乱暴に叩き付ける雨の音と吹き荒れる風の音が混じり合い大音量となっていたが、円卓の周囲に集まる者達の心音は互いの耳に届いていた。