部屋の窓を開き冷たい外気を取り込むと共に、美しい風景を眺める。
彼の眼下に広がる街と満天の星空と大地に広がる明かりが一体となり、言葉では表現できないほどの幻想的な雰囲気を作り出していた。
明日、この街で祭りが開かれる。
そう思うと気分が高揚し、眠れない時間を過ごしそうであった。その時、部屋の扉が叩かれた。
ユーリッドは誰が来たのだろうと不思議に思いつつ相手に入るように促すと、ゆっくりと扉が開き見覚えがある人物がオドオドと顔を覗かせた。
「あ、あの……こんばんは。お約束の荷物を持ってきたのですが、これで宜しいでしょうか?」
「ああ、そうでしたね」
訪れた人物は例の修道女で、その手には大量の荷物を抱え身体をふら付かせながら部屋に立ち入る。
同時に、ユーリッドの視線が荷物へ行く。
そしてひとつひとつ確かめるようにその数をチェックしていくと間違いなく全部の荷物が存在し、例の物が納められている荷物もあった。
「此方に、置いておきます」
「助かります」
言葉と同時に、乱暴に荷物を置いていく。
客人の荷物なので丁寧に扱って欲しいと思うが、重量が重量なので仕方がないと諦める。
しかし、修道女なのだから「淑やかで慎ましい」というものを持ち合わせていていいが、彼女にそれを期待してはいけないとユーリッドは結論付ける。
「何かありましたら、遠慮なく言ってください。それと、明日の賛美歌のことですけど……」
「歌うのですね」
「はい」
「時間がありましたら」
「お待ちしています。あまり上手くないですが、一生懸命に歌います。では、私はこれで……」
「有難うございます」
ユーリッドの言葉に一礼し、修道女は退室していく。
そして扉が閉まると同時に乱雑に置かれた荷物の中から、ひとつの荷物を取り出す。
それは茶色の布に包まれた、四角形の物体。
そっと撫でるように触れ開けられた形跡がないか調べるが、誰かが触れられた形跡はない。
これが誰の目にも触れていないことに胸を撫で下ろすと、それを仕舞おうとザックに手を伸ばす。
だが次の瞬間、いきなり部屋の扉が開かれた。
その音に身体をビクっと震わせると反射的に扉がある方向に視線を向け、ノックもせずに扉を開けた無礼者の顔を睨み付けた。


