「こんなに宜しいのですか?」
「いいのよ。この時期、修道院は大変でしょ?」
「で、でも……」
「こんなに沢山は、持てないわね。そうね……」
誰か代わりに運んでくれる心優しい人物がいないかどうか、女主人は店の中を見回す。
しかし目があった瞬間、誰も肉体労働をしたいと思わないので皆下を向いてしまう。そんな情けない男達に、女主人は一喝する。
するとその大声に、ユーリッドは大き目の野菜を喉に詰まらしてしまう。
大量の水を喉に流し込み喉に詰まった野菜を流し落とした後、空気を求め喘ぐ。
一瞬「あちらの世界」が見えたが、何とか落ち着きを取り戻す。
そんなユーリッドの姿に、主人の目が光った。
「貴方、体力に自信は?」
「そ、そんなには……」
「その料理を無料にしてあげるから、手伝いなさい」
そのように言われたところでこの言葉にどのような意味が含まれているかわからなかったが、再度同じ言葉を言われた時その意味を理解する。
つまり「修道女の手伝いをしろ」ということだ。
しかし何の面識もない相手の手伝い、正直ユーリッドは断りたい気分が前面にあった。
「僕じゃなくとも……」
「他の人は情けなく、誰も手伝ってくれないのよ。それに男の子なら、困っている人を助けないと」
「他の人に頼んでください」
「そうもいかないのよね」
言葉が示している通り、誰も女主人と視線を合わせようとしない。
中には急いで食事を終わらせこそこそと店を出て行く客の姿もあり、多くの客がユーリッドに同情の視線を向ける。
ユーリッドは荷物と女主人の顔を交互に眺めると、断りたいという気持ちを含んだ盛大な溜息を付くが「断る」という選択肢は状況的に有り得ないので、渋々受け入れることにした。
「わかりました。引き受けます」
「あら、話がわかるわね」
「……半分は強引ですけど」
女主人の耳に届かないように小声で本音を呟くと、料理を素早く胃に収める。
そして荷物の側に向かうとどれくらいの重さなのか試しに持ってみることにしたが、次の瞬間声にならない悲鳴を発する。
すると見兼ねた女主人が軽々と荷物を持ち上げると、ユーリッドに手渡した。


