「貴方は、気楽すぎます」
「うーん、君が真面目なだけだよ」
「これは、生まれつきです」
「なら、意識を変えた方がいいよ」
「結構です」
ユーリッドは、司教が語る神話の話を最後まで聞いていく予定だった。それだというのにエリックのとばっちりを受け、途中退場を強いられてしまう。
ユーリッドにとって聖職者の話は見聞を広めるのには最適なものであったので、エリックは邪魔としかいいようがない。
「僕は、一人で食事をします」
「あれ? 一緒じゃないのかな?」
「其方が、勝手に決めたことです。僕は、行くとは言っていません。ですから、お別れです」
そう強い口調で吐き捨てると、ユーリッドは街へ続く下り坂を駆け足で下りて行く。
体内の中に大量のストレスを蓄積させていたのか、彼の身体の周囲にはどす黒いオーラが漂っている。
普通の感覚の持ち主であったらその状況に恐れ戦くものだが、エリックは違っていた。
「宜しくやっていこうじゃないか」
ユーリッドに何か面白い物を感じ取ったのか、エリックの瞳が怪しく輝きだす。
それは獲物を捕ろうとしている獣に似ていたが、彼の本心は別に場所に存在しているといっていい。
「よっしゃー! 温泉だ」
刹那、エリックの甲高い声音が天高く叫び声が響き渡る。
次の目的の場所が決定したエリックはいそいそと温泉がある場所へ向かうと、旅の疲れと精神面の疲れを癒すことにした。
◇◆◇◆◇◆
鬱陶しい人物と別れた後、ユーリッドは街に戻ると一軒の食堂に立ち入る。
時間帯が時間帯なので店の中は多くの人で溢れ賑やかな雰囲気を湛えていたが、運良く席が空いていた。
「いらっしゃい。お疲れのようですね」
メニューを持って来た若い女性が、ユーリッドに向かい気軽に声を掛けてくる。
その言葉にユーリッドは無言で頷き返すと、彼女からメニューを受け取らず注文する。
「腹持ちがいい料理をお願いします」と言った後テーブルの上に倒れ込み、料理が出来上がるのを待つ。


