「この役目は、司教様にあります」
「いや、私は愚かさを知った。だから、その役目はない。それに私が行っては、叱られてしまう」
「で、ですが」
「司教様。我々は、このような小娘に――」
二人の会話に割り込むかたちで、エリザを認めない台詞が飛ぶ。
だが、反論を述べても鋭い視線がそれを制す。
その視線に審問官達は、息を呑む。
司教が自分達に向けてくる視線は、異端者に向けられた視線そのもので、明らかに異端審問官の動向を批判するものであった。
何があったのか――
審問官達は首を傾げると、ドロイロの変化に付いて尋ねはじめる。
すると司教は真相を告げるべきと判断したのだろう、力無く項垂れつつ礼拝堂で何があったのか静かに語りだす。
「―――!」
語られた真実に、言葉が失われる。
まさか自分達が捕らえ尋問した者が、この世界の創造主とは誰が想像できるだろうか。
自分達が行ってしまった内容に身体が小刻みに震え、背中に冷たいものが流れ落ちる。
一歩間違えれば命を失い、この世界は崩壊していたに違いない。
「もう、隠せぬ」
その言葉に、エリザ以外の者達が一斉に頷く。
創造主リゼルに自分達が行っていることを知られ、その結果精霊の裁きが下されてしまう。
これ以上の無駄な足掻きは、多くの命を犠牲にしなければいけない。
そのような選択はできるわけがなく、自分達の愚かさを認めないといけない。
「エリザといったな」
「は、はい」
刹那、ドロイロがエリザに跪く。
予想もしていなかった行動にエリザは「やめてください」と言うが、相手は頭を振るだけ。
リゼルに選ばれたとなれば、即ち代弁者。
跪く理由はある。
「お導きを――聖女よ」
聖女という単語に、エリザの頭は真っ白になる。
彼女は歴史を書き記すだけの役割を担おうとしていただけなのにここまで担がれるとは思ってもみなかったので、思考が一時停止する。
しかし、これは紛れもない真実。
跪いたのはドロイロだけではなく、他の者達も同じ行為を見せる。
無論、その中に異端審問官も含まれていた。
信じられなかった。人々に恐れられている異端審問官が、跪いていることに。
同時に、それは自分の力ではないことも思い知らされる。


