「……何故こうなってしまったのか、私は知りたい」
先程とは打って変わって、弱弱しい声音。
これこそ、彼の本音なのだろう。
自分で創造した生き物に、身体を傷付けられた――まるで、親に歯向かった子供のようなもの。
だからこそ、無性に悲しい。
辺りが静まり返る。そして人々は視線を一転に集め、同じ反応を見せる。
銀糸――いや、降り積もった雪の如く美しい髪が揺れる。
また、朝焼けの色に似た双眸が不思議な魅力を放つ。
それはまぎれもなくユーリッドであり、彼のリゼルとしての姿である。
「我が主よ――」
主人の本来の姿に、レスタが跪く。
それに続くかたちで、エリザも跪いた。
リゼルという存在だからという理由も関係していたが、創造主としての神々しさを素直に感じ取ることができたから。
そしてドロイロ達は驚きとも唖然とも取れる表情を作り、腰が抜けたのかその場に座り込む。
口を半開きにしながら目の前で起こったことを受け入れようと試みるが、受け入れれば受け入れるほど自分達がしてしまった罪の重さに気付き、中にはことの大きさに気絶する者までいた。
「役目は、わかっているな」
「このことを後世に――」
エリザの言葉に、ユーリッドは満足そうに頷き返す。
これで、死んでいった学者の思いが報われるだろう。
そして、神話への見方が変わる。
千年――それは果てしない時間だが、この時新しい歴史が刻まれた。
「行くぞ」
「御意」
レスタは返事を返すと同時に立ち上がると、立ち去るユーリッドの後を追う。
刹那、二人の身体が空中に溶け込むように消え去り、其処に残ったのは冷たさに包まれた空間のみだった。
「……嘘だ」
静寂の中に、ドロイロの声が響く。
司教の声にエリザは震えている聖職者達のもとへ駆け寄ると両膝をつき、今まで起こったことが真だと伝えていく。
その瞬間、彼等の顔から血の気が引いていった。
「それでは……」
「はい。あの方こそ、この世界の創造主」
その言葉に続いたのは、慟哭の叫びと取れる悲鳴であった。
自分に逆らえる者はいないと自負してきた司教にとってそれはあまりにも巨大な出来事であり、恐れ多いことでもある。
また、それだけのことをして命が奪われなかったのは運が良かったのか、ドロイロは頭を抱える。


