「一緒に来るか?」
「はい。このことを記録として残したいと思います。今まで、明確な記録がありませんので」
「強いね。もっと早くエリザのような人間が現れていたら、歴史は異なった道を描いていた」
悔いたところで、過去が変わるわけではない。
だからこそ現実に起こっていることを受け止め、最善の方法を模索する。
過ちは修正し、正しい方向へと導く。
エリザと出会ったのは運命であり、必然だろう。
彼女は選ばれた。
歴史の語り部となると同時に、記録者である役目を担うことを――
「レスタを止めた後、私は一切関与しない。無論、助けを求められても救いはしない。後の始末は、任せる」
彼の言葉にエリザは力強く頷くと、改めて決意した内容の重大さを知る。
一度意思を示してしまった今、リゼルのもとから逃げることはできない。
それだけ運命を背負うことは重い。
「行くぞ」
口調が、明らかに異なっていた。
自身を私と呼び創造主という雰囲気と威厳を漂わせていたが、エリザは恐ろしいという感情は湧いてこない。
寧ろ、安心感があった。
学者達の魂を開放する時に見せた一面と同じだというのに、今は別人のようだ。
本当に同一人物なのかと、疑ってしまう。
しかし、間違いなく目の前に存在しているのは本物。
創造主は本来は大らかな心の持ち主であったが、人間が牙を向けた影響で本質が変わってしまった。
ただ、それだけのこと――
「はい、リゼル様」
決意が含まれたエリザの言葉に、リゼルは口許を緩めつつ頷き返す。
そしてエリザに向かいそっと手を差し出すと、彼女に手を取るように促す。
其処に、歴史の転換点を見出して――
◇◆◇◆◇◆
礼拝堂に、震えた祈りの言葉が響く。
それはレスタの力から逃れたドロイロを含め生き残った者達が懸命に祈りを捧げていたのだが、彼等に対し精霊が救いの手を差し伸べることはない。
何故なら怒りを表しているのはその精霊であり、相手はレスタ。
他の精霊達は、手を出そうとはしない。
彼は、精霊の中で一番強い力を持っている。
だから、歯向かうことなど行わない。
それでも歯をかち鳴らし祈り続けるが、中には寒さによって倒れてしまう者もいた。


