それ以前に、精霊達のことも感じ取れないでいた。
何が聖職者だ――憤りを通り越して、呆れてしまう。
彼等は名ばかりの存在で、全ての人間の尊敬を集めているという点が彼等の心の支えだ。
「人が、正しきことを知ればいい」
「正しきこと……千年前のあの事件ですね」
「そうだ。全てのはじまりは、千年前に遡る。故に、彼等の憎しみは計り知れない。だから……」
「この事と、過去の事実を公にすればいいのですね。数多くの学者が、なそうとしたことを――」
溢れる涙を拭うと、真っ直ぐな瞳でユーリッドを見詰める。
其処には、迷いはなかった。
人間という生き物が犯した罪を認め、下された烙印を裁きと共に受ける。
エリザはその場で跪くと、そのことを誓った。
「多くの物を背負うぞ」
「構いません。誰かが……行わなければ。そうしなければ、多くの者を救うことができません」
「わかった。エリザがそう望むのなら――」
それは、低い声音であった。
其処にはユーリッドという人物ではなく、リゼルという人物が存在していた。
同時に、ユーリッドの表情が変化する。
それは、漂うレスタの気配が変わったのだ。
「これ以上、暴れさせるわけにはいかない」
暫くの間、レスタの行動を眺めていた。
しかしこのまま何も言わなければ被害は間違いなく広がってしまい、数日のうちに世界は雪に沈み多くの人間が死んでしまう。
流石に、それをさせるわけにはいかない。
いくら自分のことを思っているとしても、物事には限度がある。
過去、人間達に身体を傷付けられた。
一方、生み出したからには自身の子供に代わらない。
それに関係のない人間達が無残に殺されていくのは、見ていて気分がいいものではない。
気に入らない。
創造の対象が創造主に牙を向けた時、そのような感情があった。
本当のところ、レスタより荒々しい感情が芽生えていた。
だが傷を癒す為に人間に転生し、彼等の生活を見ていてその考えが変わってきたのも確か。
一体何が生まれたのだろうと考えても、明確な結論は出ない。
ただ自身の両親や祖父母、そしてエリザのような人間に出会ったから変わったのだろう。
だからこそ、嘘をつく者が極端に嫌う。
この世から消滅を願うのは聖職者であり、ごく一部の人間。
その他の人間に全く罪がないといったら嘘になってしまうが、彼等より正しく生きている。


