風の放浪者


 街が、白い色彩に覆われていく。

 このままだと街が雪に沈むのは時間の問題であり、何か対策を――しかし、人間達は何も行おうとはしない。

 ただ恐怖に震え、祈り続けるのが精一杯。

「まあ、自業自得でしょうね」

 自分達が罰し手を上げてしまった相手が、創造主ということは気付いていない。

 もし気付いていたとしたら、あのような行動は起こさない。

 だが罪を犯してしまい、一人また一人と命の炎が消えていく。

 レスタは確実に聖職者を狙い、その命を奪っていく。

 そして全ての聖職者の命を奪ったその次は、彼等の教えに従う者達を消していく。

 そう、レスタにとって人間は所詮同じなのだ。

 悔い改めよ。

 それが行われたとしたら、救いの道は存在する。


◇◆◇◆◇◆


 大気が、音をたて凍り付いていく。

 肺に吸い込む空気は容赦なく体温を奪い取り、生き物達の動きを制限していく。

 先程から、人間の姿を見ていない。修道院から逃げ出したのだろうか、それとも何か行っているのか。

 いや、全員がレスタにやられた可能性も高かった。

 レスタは、力を振るうことを止めようとはしない。

 寧ろ力を強め、溜まりに溜まった何かを吐き出しているかのように思えてくる。

 許さない――そのような言葉が、聞こえてきそうだ。

 その時、前方で何かが動く。

 ユーリッドは駆け足でそれに近付くと、それが何なのか確認する。

「……エリザ」

 突然の登場に、ユーリッドは驚きを隠せない。

 無論、エリザも同じだ。

 ユーリッドの姿に最初は顔を強張らせていたが、見覚えのある顔に安心したのか急に嗚咽を漏らし泣き出す。

「どうした?」

「……これって、精霊の怒りですよね」

「ああ」

「とうとう、精霊を怒らせてしまったのですね。これから先、一体どうすればいいのでしょうか」

 震える声音で、そう尋ねる。

 修道院の中で、エリザだけが精霊達の気持ちに気付いていた。真実を知っていたという理由もあるが、純粋な人間ほど精霊の感情を感じやすい。

 それに閉じ込められていた部屋から、見張りが逃げ出している。

 高位の聖職者が、リゼルという偉大な存在に気付くことはなかった。