風の放浪者


「多くの人間を殺した罰だよ」

 口元に笑みを浮かべ、裁きが下った街に非情な言葉を述べる。

 聖職者は、真実を隠す為に学者を殺した。

 それが実際に行われるとは――やはり、聖職者はそこまでの生き物であった。

「血で償うべきだね」

 しかし、ユーリッドは何も言わなかった。

 創造主は、常に一定の見方をしなければいけない。

 だからこそ精霊がどのように動き、どのように行動しようとも止めることは行わない。

 だが、この世界の人間を滅ぼすわけにはいかないのは確かだ。

 千年前の出来事は、二度と起こすわけにはいかない。

 己の血肉を奪った人間は憎らしいが、それ以外の生き物は無罪だ。

「この街は、雪に沈むでしょう」

「じゃあ、外に出られないの?」

「今外に出たら、確実に凍死してしまいます。その覚悟があるのなら、外に出るといいでしょう」

「脅し?」

「そう思うのでしたら、好きになさるといいでしょう。貴方は、どの場所でも生き残れます」

「酷い言葉」

「関係ないです。で、僕は彼女の所に行ってきます。貴方は貴方で、頑張って切り抜けてください」

 彼女――正直、エリザのことが心配であった。

 本当は、エリックを捜していたのではなくエリザの様子を見に行こうと思っていた。

 今回たまたま耳障りな歌が聞こえたので、エリックに会いに来たのである。

 つまり歌わなければ、彼はほったらかしの状態で凍死していた。

「えー、一緒に行こう」

「嫌です」

 元気を取り戻したエリックはユーリッドの脚にしがみ付くと、猫なで声で甘えてくる。

 その不気味すぎる姿に、ユーリッドの身体に何か得体の知れない物が走り抜け鳥肌が立つ。

 反射的に張り倒し気絶させたい心境に狩られるが、いくらエリックであっても気絶させるのは可哀想だ。

 それに、後で恨まれたら面倒である。

 ユーリッドは顔を引き攣らせながら懸命に優しい声で離れるように言うが、エリックは離れようとしない。

 置いていかれるのが寂しいのだろう、エリックはユーリッドに泣きつく。


 その姿は雨に濡れ震えている子犬に等しいが、幼い子供がやったら実に可愛い。だが相手はあのエリックなので、可愛いどころか気持ち悪い。