「愚か。いや、これは……」
この後の言葉は続かない。
人間に愛想をつかし見放したような発言でもあったが、表情に表すことはなかった。
溜息を付いた後、踵を返しユーリッドは部屋から出ていこうとする。
だが、指を鳴らし合図のようなものを送ると、氷が砕け閉じ込められていた人間が解放された。
全ての人間が前のめりで倒れるが、手を差し伸べることはしない。
そして、扉が閉じられた。
◇◆◇◆◇◆
急激な寒さにより、エリックは動けないでいた。
取調べということで連れてこられたこの部屋の暖炉には火が入っておらず、凍え死ぬ寸前であった。
また、この部屋にはエリック以外誰もいない。
「な、何なんだ!」
一応、叫ぶだけの元気は残されていたが、それ以上のことは行えない。
床に座り蹲り誰かが来ることを待っていると、廊下に足音が彼の耳に届く。
その音にエリックは「助けが来た」と思い、何を思ったのか歌いだす。
「……煩いです」
扉が開かれると同時に、毒が吐かれる。
聞き覚えのある声にエリックの顔が明るく光るが相手の顔を見た瞬間、エリックの表情が一変した。
相手のユーリッドの形相に、全身から血が引いたのだ。
「歌うだけの元気があるなら、逃げられますね」
「厳しい。優しくして」
「お断りします。なら、この部屋にずっといますか?」
「そ、それは……」
「それと、火は点けられませんから。凍りつきますので」
試しとばかりに、暖炉に薪を焼べると火を点す。
すると、一瞬にして炎が凍り付いてしまう。
その信じられない光景にエリックは言葉を失い、パクパクと口を開け閉めを繰り返す。
炎を凍らせたという現象より、この寒さで生きているということの方が信じられないようだ。
「精霊を怒らせた」
「うわ! やるところまでやったね」
しかし、炎が凍りついたより驚きはしない。
エリックはこうなることを最初から予想していたのか、意外に冷静に受け止めていた。
そして身体を震わせ、大声で笑い出す。
普段のエリックから考えられない行動に、ユーリッドは目を丸くし思わず相手の顔を見てしまう。


