風の放浪者


 一人だけ生き残ったドロイロは、氷像と化した仲間達に視線を向ける。

 そして震える声音でユーリッドとレスタに真意を問い質すも、レスタが声を上げて笑う。

 滅多に感情を表に表さないレスタの行動にユーリッドは驚いた素振りを見せるも、それ以上の反応は特にない。

「精霊使いの分際が!」

 その言葉は、更にレスタの感情を逆撫ですることとなる。

 ドロイロを凍りつかせようと手を振り上げた瞬間、か細い悲鳴を上げ部屋から出て行ってしまう。

 その何とも醜い姿に、レスタは力を振るうことを止めてしまう。

 どうやら、殺すに値しない人物と判断したようだ。

「……レスタ」

「今回だけは、お許しください。今回の件は我だけではなく、他の者の同じ感情を持っております」

 刹那、遠くから男女の悲鳴が響く。

 レスタの話では、フリムカーシが暴れているようだ。

 物事の通りを弁えた精霊だと思っていたが、レスタ以上に頭に血が上りやすい性格と判明した。

「人間という生き物は、敵であり排除すべき存在です」

「……間違っていたのか」

「そのようなことはございません。主は生み出しただけで、その後は奴等の生き方によってこうなったのです」

 己が生み出した存在に血肉を奪われ、真実を隠された。

 尚且つ異端者と決め付けられ、殴られることに――創造主を崇めることを忘れた彼等にとって、所詮リゼルという存在は神話の中だけに生きている。

 精霊信仰というのは、どのような意味があるのか。

 また、創造主は偉い存在なのか。

 聖職者は創造主や精霊の名を利用しているだけであり、だからこそ信者に正しいことを伝えようとはしない。

「では、我は……」

 これから人間狩りに向かうのか、頭を下げる瞬間に見えて瞳が怪しく光っていた。

 まさに千年前の再現。

 全身を傷つけられ、倒れた時に見たレスタの表情と同じ表情を彼は浮かべている。

 彼が姿を消した瞬間、更に気温が下がっていく。

 その時、突風が窓を揺らす。

 音がした方向に視線を向ければ、窓に雪が張り付いていた。

 秋のはじまりだというのに雪が降るのは、それだけ彼の怒りが強いのだ。

 自分が支配する季節以外に自身の力を振るうことは、本来は決して行なってはいけない。

 それでも中には例外があり、それは精霊が人間に対して裁きを下す時。

 だがそれに気付く者は少なく、暢気に構えている者は「精霊が勘違いした」と言い、笑い話にしているだろう。