「精霊の代弁者と申すのなら、接触も可能だと思います。まさか、できないというのですか?」
完全に図星であったので、誰一人として答えを発しようとはしない。
残念ながら、精霊という生き物の本質を知らない。どのような姿をし、どのような性質を持っているか。
彼等が持っているのは古来より伝わる口伝と書物の知識のみであって、目撃者など存在しない。
「やけに寒いですね」
「それは、お前が命令をしているからだ」
「違いますよ。貴方方も知っているはず。四季を司る精霊は、人間の命を受け付けないと。そう、白き竜以外――」
その発言に、全員の顔色が変化する。
その変わり様に、ユーリッドはあることに気付く。
此処にいる者達は、神話の真実を知っている。
そして、学者を葬る切っ掛けを作ったのも彼等。
「何ゆえ、こうなったのか」
ユーリッドは目を閉じると、過去の出来事を思い出していく。
あの事件は一部の人間の驕りから生まれたとされているが、本当は違う。
力の低下を危惧した、聖職者がそのようにしろと命じたのだ。
あの方の力を得られれば。
信仰は嫉妬へと変化した。
「何故、我々は力がない」「何故、創造主はこのように作ったのか」そしてその矛先を創造主に向けたが、結末は散々なもの。
精霊が人間を狩った――
「物事には、境界線がるというのに……しかし、お前達はそれを破ってしまった。自身の立場を弁えず」
閉じていた目が開かれ、真っ直ぐとした瞳でドロイロの顔を見詰める。
するとその瞳は青ではなく、オレンジ色に変化をしていた。
人間の間では存在しないその色彩にドロイロはか細い悲鳴を上げ、身体を震わす。
刹那、突き刺すような冷たい風が部屋の中を駆け巡った。
彼の怒りが近い。
そう感じ取ったユーリッドは、止めるという行為を行わない。
そもそも、レスタは命令を受け付けない。
そして後は彼の理性を追えているモノを外す切っ掛けがあれば、怒りのまま力を振るうだろう。
四季を司る精霊の中で、最強と謳われるレスタの力。
四季の精霊を表す「ノーマ」という言葉は、彼の為にあるようなものだ。
そう、ノーマという単語は「白き竜の眷属」ではなく「断罪者」という意味が含まれている。
リゼルや精霊達の主に仇なす者をことごとく排除し、この世の平定を図っていく。
学者でさえ知られていない言葉など、彼等が知るはずがない。


