エリザは息を呑む。
傍にこの感触を与える主――レスタがいることを感じ取ったからだ。
周囲を見回してもレスタの姿はなく、彼は姿を消し自分達を監視している。
そうわかった瞬間、全身の血が凍り付く。
「い、嫌っ!」
レスタが発する殺気に耐え切れなくなったのか、エリザは大声で叫ぶ。
絹を裂いたような悲鳴に一瞬周囲から音が消えるが、その狂ったような様子に誰も同情することはなかった。
「いかれたか」
「何処かに、閉じ込めておけ。取調べの邪魔になる。しかし、ここまで狂いたくないものだ」
ドロイロの命令により、エリザは部屋から強制的に連れ出される。目許に涙を浮かべ必死に抵抗するも、男の力の前では無力だった。そして扉が閉まる瞬間、エリザは大声で叫ぶ。
あの方に、手を出してはいけない。
だが、誰一人として聞き入れてはくれない。
ただの絵空事であり戯言。
所詮、彼等は目に見えることしか信用しておらず、自分達が全て――その考えが千年前の悲劇を再現しようとしていた。
そして、人類は滅びの道を辿る。
◇◆◇◆◇◆
また、周囲の温度が下がった。
部屋を暖める為に更に薪が焼べられるも温かさが広がることはないく、一気に冬が訪れた。
そう感じる者もいたが、その意見が受け入れられることはない。
先程までエリザが使用していた椅子に、今度はユーリッドが腰掛けていた。
その表情は至って冷静で、聖職者に尋問されようとも眉ひとつ動かさない。
淡々と質問されたことに答えていく姿は、逆に恐ろしさを与える。
「精霊は、我々を加護している」
「それは、存じていますよ」
「なら、支配を解け」
「それは、無理な相談です。そう願うのなら、貴方達が彼等に命令すればいい。それだけの力は、あると思いますが」
ドロイロの発言に対し、ユーリッドの瞳が怪しく光る。
それは睨み付けるという眼光ではなく、確実に相手を威圧していた。
その眼光の鋭さに聖職者は思わず息を呑むが、たじろぐわけにはいかない。
立場は上――それだけが、彼等の惨め過ぎるプライドを支えていた。


